トランス脂肪酸・2種類の発生パターン
「トランス脂肪酸」という言葉を良く耳にします。
とにかく悪いもの、というイメージだけははっきりあるのですが、ある書籍を読んで、トランス脂肪酸の発生過程には主に2種類(天然を除く)あることをつい最近知りました。
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トランス脂肪酸は自然界にもわずかに存在しますが、毒性が強いものは、ほとんどが加工や加熱など人工的に手を加えた時に生じます。
トランス脂肪酸が生じる主な条件としては、次のような場合があります。
1) 植物油などに水素を添加して硬化させて、固形にする場合
→一般的に「トランス脂肪酸」というと、こちらを指しているのではないかと思います。マーガリンがその代表ですが、ファットスプレッド、ショートニングなどもマーガリンと同類であると言えます。
お菓子やパン等で「ファットスプレッド」「ショートニング」の表示をよく見かけますが、自分もあまりよく分かっていませんでした・・・。
ファットスプレッド
ファットスプレッドは「マーガリン類」に属しており、ざっくり言うとマーガリンとの違いは「油脂含有率」です。マーガリンは80%以上、ショートニングは80%未満です。
ショートニング
マーガリンから液体や添加物を除去し、純度を高めてクリーム状にしたもの。さくっと、ぱりっとした食感を出すため等に使用されます。
2) 植物油などを高温で揚げたり、炒めたりする場合
→高温で調理された揚げ物等が該当します。
ただ、農林水産省HPによると、
「農林水産省が加熱による油脂中のトランス脂肪酸濃度への影響を調査した結果、通常の揚げ調理の条件下における油脂の加熱(160~200℃)では、同じ油を何度も繰り返し加熱したとしてもトランス脂肪酸はごく微量しか生成せず、その影響は無視できることを確認しました。」
とのことです。そのため2)のケースは一般的にあまり注目されていないのでしょうか。
私は料理に明るくないため、200℃以上の高温状態がどの程度起こり得るものなのかは分かりませんが、
・同じ油を何度も繰り返し使用した場合、微量のトランス脂肪酸が発生している
・『通常ではない』200℃以上の高温の場合は国レベルでは未検証
であることは言えそうです。
なお農林水産省HPでは、サラダ油などの精製した植物油にも、微量のトランス脂肪酸が含まれているものがある旨について言及しています。植物や魚からとった油を精製する工程で、好ましくない臭いを取り除くために高温で処理することにより、油に含まれているシス型の不飽和脂肪酸からトランス脂肪酸が出来ることがあるとのことです。
参考URL
農林水産省/マーガリン類の日本農林規格(ファットスプレッド)
「マーガリン」と「ショートニング」は危険な油!? 世の中の加工油脂を解説
参考書籍
アイザック・H・ジョーンズ. 世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術
-----------------------おまけ:海外と日本の対応(2018年12月現在)-----------------------
米国では2018年6月より部分水素添加油脂(トランス脂肪酸を含む油脂)の規制を開始しました。
EUでは2018年10月4日に、「消費者に販売される食品中のトランス脂肪酸(動物性脂肪に含まれる天然由来のものを除く)の濃度を、最終製品中の脂質100 g当たり2 gを超えないようにしなければならない」とする規制案が公表されています。
EUでは2018年10月、消費者に販売される全ての食品中のトランス脂肪酸の濃度の規制案を公表ししました。またEU加盟国の中には、デンマークのように独自に規制を行っている国もあります。
日本では現在、トランス脂肪酸の使用量の規制等は特段実施されていません。日本では欧米と比べて摂取量は比較的少ないこと、天然・加工含め多くの種類があるトランス脂肪酸のうち、どのトランス脂肪酸が悪影響かについて十分な情報が無いこと等が理由として挙げられています。